2015年05月16日

大前研一氏のオピニオン…「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」

中国国旗インターネットニュースに、「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に関する大前研一氏のオピニオンが掲載されていた。

世の中の動きについて、管理人は明確な意見を持っていないノンポリだが、彼のオピニオンを読んで、すっきりしなかった考えがまとまって、我が意を得たりという心境になった。

彼は現役時代の会社の先輩にもあたる人なので、少しばかり親近感があるせいかもしれないが。

ここに彼の記事を、全文、少しの手を加えることなく転載するので、ご一読を!


AIIB参加は愚の骨頂であり検討する価値すらないと大前研一氏

    NEWS ポストゼブン 423()166分配信


 約50か国が参加表明している中国主導の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に日本も参加すべきかどうかをめぐり賛否両論が入り乱れている。
ドイツ首相からも参加を呼び掛けられ、政府に参加を促す意見が大きくなりつつある。
中国は国内事情のためにAIIBを創設するのだと喝破する大前研一氏が、参加するのは愚の骨頂と断言する理由は何か。
同氏が解説する。


 これまで中国は世界の歴史に例がないほど長大・膨大な高速道路や高速鉄道、港湾、空港などを建設し、大がかりな都市開発を推進してきた。
たとえば、1990年代の初めには16しかなかった100万都市が今や200に上り、高さ200m以上の超高層ビルが345もあって世界一多い。
高速鉄道網は2015年末に総延長が25000kmに達する計画だ。


 ところが、そういうインフラを建設してきた中国国内の鉄鋼・機械メーカー、鉄道車両メーカー、建設会社、セメントメーカー、デベロッパーなどの“巨大マシン”が、中国経済のスローダウンによって、いま突然止まりかかっている。
このままでは巨大マシンが設備過剰で崩壊して国家そのものが破綻しかねない。


 だから、AIIBを創設してそれらの企業を労働者も含めた“人馬一体”で海外に持っていこうとしているのだ。
決して一部マスコミが解説している「欧米先進国の金融覇権に対する中国の挑戦」とか「豊富な中国マネーで途上国を潤すため」ではないのである。


 それにヨーロッパ、アジア、中東などの国々が便乗しようとしているわけだが、甘い幻想と言うしかない。

 AIIBは海外で中国企業の仕事を創出することが主目的だから、プロジェクトのメインの部分は中国企業が持っていくので、あとの国の企業は“刺し身のつま”か“ピザ一切れ”になるだけだ。
中国主導のプロジェクトの中で、そのおこぼれだけをもらっても、何の意味もないだろう。


 また、日本にはインフラプロジェクトの中でどうしても使わなければならない技術を持っている企業がいくつかある。
たとえば、水処理の半透膜や地熱発電のガスタービン、鉄道のシステムなどである。
そうした企業は日本がAIIBに出資していなくても、現地政府から随意契約で参加を要請されるだろう。


 さらに、12か国参加のTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉でさえ難航しているのを見ればわかるように、50か国も参加するとなれば、各国の利害が対立するので話がまとまるわけがない。
かてて加えて、新参のAIIBはプロジェクト評価の経験を積んでいないから、すでに世界銀行やADBが検討してやめているようなプロジェクトに手を出して大失敗する可能性が高い。


 ゆえに、これから日本がAIIBに参加するのは愚の骨頂であり、そもそも参加を検討する価値すらない。

※週刊ポスト201551日号


参考までに 51日の日経新聞に掲載されていた参加国の出資比率表があったのでご覧ください。
これを見れば「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の運営に、中国の意向が強く反映されるものであることが分かる。

AIIB出資比率日経5月1日


Posted by tomato1111 at 00:00│忙中閑