2013年01月26日

「割愛(かつあい)」…言葉の種

272[1]割愛』(かつあい)

 ☆----------惜しいと思うものを、思い切って

          省略したり、手放したりすること----------

 愛を割(さ)くと書いて、『割愛』。 その字のとおり、もともとは、愛着を断ち切ることでした。 

 たとえば、仏門に入る場合などに、煩悩を捨て去るという意味でも使われました。


 養蚕(ようさん)でも、『割愛』という言葉を使うそうですが、

 こちらは、そのまま、交尾中の雄と雌を引き離すことだとか。

 体力を消耗させないためと、その雄を未交尾の雌にあてがう

 ためだといいます。


 そういえば、「惜しい」という言葉は、古くは、「をし」。 

 漢字は、「愛」をあてました。 

 消えていくもの、失われるものへのいとおしさをあらわす言葉が、

 「愛(を)し」だったのです。 

 ですから、『万葉集』では、雪が消えたり、草花が散ったり、

 人が老いたりすることにも用いました。 


 近世以降の『割愛』は、こちらの気持ちと共通していますね。 

 愛(お)しみながらも、手放す……。

 ところが、いつのまにか、単に、不要なものを切り捨てること

 と解釈する人が増えているようです。 

 簡単に、ものが捨てられる時代のあらわれでしょうか。 


 『割愛』から、愛が消えてしまうのは、心から惜しい気がする

 のですが……。


241008

 

発行者:夢子 こと 山下景子

 『センスを磨き、幸せを呼ぶ〜夢の言の葉〜』