2012年06月06日

劇団民藝「うしろ姿のしぐれてゆくか」を鑑賞

後姿パンフレット
6月5日()新宿・紀伊國屋サザンシアター劇団民藝「うしろ姿のしぐれてゆくかを鑑賞した。


これぞ劇団民藝の芝居と思った。

高齢者のわたしは、チャラチャラした落ち着きのない芝居は嫌いだ。

またバタバタ動きのある芝居も嫌いだ。

ステージもめまぐるしく変わる芝居は嫌いだ。

そこへ行くと劇団民藝の芝居は、わたしにとって妙に合っている。

漂泊の俳人、種田山頭火(たねださんとうか、1882-1940)を主人公にした芝居「うしろ姿のしぐれてゆくか」は、最初から最後まで肩の凝らない、日本人のノスタルジアをくすぐる舞台で久しぶりに楽しめた。
   (左:公式パンフレット)
       (参考:劇団民藝 索引


山頭火1



この年になって憧れる生き方、うらやましい生き方を実践した山頭火は、理想の人だ。


妻子を捨て、乞食坊主としての放浪、行乞の旅。
酒と女と友人たちへの金の無心。
定住へのあこがれと漂白。
偽善。
放埓。
無一物の道を選び雲水姿で放浪する山頭火。

昭和15年に約1万数千もの句を残して59歳の生涯を終えた山頭火。


舞台に流れる般若心経、尺八の音、三味線などの音響も心に馴染む。


舞台が終わって振り返ってみると、この芝居に登場した男性は山頭火一人。

あとは14人の彼を取り巻く出会いと別れの女たちという珍しい芝居だった。






山頭火2


山頭火が東北地方への旅で鶴岡に立ち寄った時に泊まった宿の派手な宴席で劇団民藝の若手女性団員(大越弥生、石巻美香、藤巻るも)が演じた芸者は雰囲気がよく出ていて出色だった。

作品製作をまとめた高本佳英氏によれば、三味線・太鼓・歌(安来節・酒田甚句)の稽古を2月から3か月以上行って舞台に備えたそうだ。



(写真:内藤安彦)






山頭火4




当初は山頭火役を大滝秀治氏が担当することになっていたが体調を崩し、急遽、内藤安彦氏にバトンタッチされた。

 

6月4日のNHKニュースで、大滝秀治氏が病院を退院したと報じていたので、民藝ファンとしてはホッとした。
大滝氏は、『自分の過去や未来はない、あるのは今だけ。その今を役者として悔いの無いように過ごしたい。』という持論を聞き、ほっとした次第。
  (写真:右から内藤安彦、若杉 民)





うしろ姿キャスト









網代笠と鉄鉢を持つ山頭火(内藤安彦)を囲む出会いと別れの女たち。
(写真出典:民藝機関誌「民藝の仲間」2012年6月1日号)