オーストリア・ザルツブルグから70km離れたところにある人口1万人の街、Ried(リーズ)。
今回の欧州旅行の最後の二日間は、娘が留学していた時のホストファミリーが住むリーズの街で過ごした。(娘と孫たちはザルツブルグに寄らず、リーズで4日間過ごした。)
ここは世界で活躍しているトップジャンパーたちが愛用しているジャンプスキー板トップメーカーFISCHER社の本社工場がある街。
(写真は日本の葛西選手が、オーストリアでのワールドカップ予選通過を報じた朝日新聞1月5日付夕刊。スキー板はFISCHERを使用)
娘と幼い孫二人は、ホストファミリーの家で、わたしと妻は町にあるGastohof(オーストリア・ドイツのクラシックな旅籠)に宿をとり最後のオーストリアでの休暇を楽しんだ。
奇しくもリーズの街に入った日は、クリスマスイヴの日。
わたしたちはリーズにある3か所の教会をはしごして、それぞれ異なるクリスマスを現地の人と一緒に祝った。
この街の教会はすべてカソリック教会。
カソリックの教会でのクリスマスイヴは、若かりし頃の学生時代、上智大学セントイグニチオ教会のクリスマスミサに参加したことがある。
久し振りに厳かなカソリックのクリスマスイヴ礼拝に参加した。

最初は4時から始まった子供たちが中心になって、寸劇を交えてクリスマスの意義を紹介していた教会。
孫たちは現地の子供たちと聖壇の前に行き、牧師さんからキリストの分身であるちぎったパンを厳かにいただき祝福を受ける儀式に参加。
多くの乳母車に乗せられた幼子と両親などおよそ1000人が列席。
ここでは子供が少しくらい泣いても白い目で見られることはないので、安心できる。
これと同じ儀式が30年前にドイツに駐在していた時、クリスマス休暇で訪れていたインスブルックの街で同じクリスマスイヴの夜、街の教会で娘と息子が、受けたことがあった。

教会の礼拝が終わると、三々五々と近くにある お墓参りをした。
ホストファミリーの祖母が9月に亡くなり、平地の林の中にある墓地に土葬されており、そこに親族が集まり真っ暗やみの中でろうそくが入れられた赤い行燈にお墓の上に置く。
頭に当たるところには板で十字架がしつらえられておりそこにイエスの像がくくられていた。
その林の中で木立に囲まれた墓地には100か所以上の墓地が整然とあり、暗闇の中であちこちで赤い灯がともっているのは日本人の私には異様にさえ感じられた。
黙々と無言で明かり一つない林の中の墓地に人々は集まり、身内のお墓の周りに10分以上ただ立ち尽くしているだけ。
日本でもお正月にはまず菩提寺を参拝する習わしがあり、カソリック教徒もクリスマスの礼拝を済ませるとお墓参りをする習慣があるのだ。
同地では亡くなると土葬にするか火葬にするか選択できるそうだが、一般的には土葬を選択するケースが多いとのこと。
この後は、ホストファミリーの家に移動し、ホストファミリーとその子供たち、結婚した子どもたちは連れ合いを連れてたくさんの人が家に集合していた。
家のリビングには大きなクリスマスツリーが鎮座しており、そこには本物のキャンドルとたくさんのチョコレートが下がっていた。
式をつかさどるS氏が、ツリーに飾られたキャンドルに一本一本火をつけ、部屋のライトを消して、居間に集った全員で「聖この夜」の合唱し、雰囲気が最高に盛り上がった。
歌が終わるとライトを点灯、そこに集っていた人々はお互いにキスを交わし、ホストから一人一人に美しく包装されたクリスマスプレゼントが配られる。
わたしたち夫婦にもプレゼントが渡された。
幼い孫たちも年齢にふさわしいプレゼントが渡され、とても喜んでいた。
ホストのプレゼント渡しが終わると、参加者が思い思いに用意してきたプレゼントを思い思いの人に渡す交換に移った。
そしてその場で受け取ったプレゼントをその場で開けて、中身を確認し感謝の意を表す。
式が終了すると、テーブルに移り、クリスマスを祝う食事になる。
テーブルの上には数ヶ月前から準備してきたという彩り豊かなクリスマスクッキーが山盛りに盛られていて、子供たちは大喜び。
クッキーの種類は15種類もあろうかというほどの多種多様の手作りクッキーが盛られている。
これは日本のお正月のおせち料理に相当するものなり。
クリスマスといえどもゲルマン民族の流れをくむオーストリア人のクリスマスの食卓は質素そのもの。
家族全員でにぎやかに食事を進める。
ビール・ワインなどのアルコールもふんだんに振る舞われた。
少し時間が経過すると、シュナップス(日本の焼酎に当たる蒸留酒)の出番。
小さなグラスの底のほうにわずかにシュナップスを注ぎ、受け取ったら一気に喉へ流し込む飲み方が正当な飲み方。
度数はおよそ40度前後。材料はいろいろあるが、今日のシュナップスはプラムとか。
ホストファミリー宅での家族との穏やかで和やかなクリスマスの祝いが進んでいく。

ホストのS氏から夜の9時から始まる別の教会で行われた大人を対象にしたキリストの誕生を祝うミサにわたしたち夫婦が誘われて3人で参加。
教会に入る時は、まず手を清め、右ひざを土につけて神への畏敬の念を現わしてから入場。
式の次第に合わせてドイツ語で神への誓いの短い言葉を、牧師さんの言葉に従って繰り返して言う。
そして『アーメン!』と合唱。
街のボランティアと思しき聖歌隊が、ピアノとギターで賛美歌を演奏。

列席している信者はおよそ100人。
わたしはホスト宅での祝いで、ビール・ワイン・シュナップスを多くの人から受けて飲みすぎ、教会の厳かなミサの最中は、妻に言わせれば、ときどきコックリコックリしていたとか。
日本ではなかなか経験できない1年に一回しかないクリスマスイヴの家庭での過ごし方を経験し、敬虔なカソリックのクリスマスイヴのミサにカソリック教会で経験するという貴重な経験をすることができたのは、幸せだった。