この国の農業は長い間、生産性が低い、効率が悪いなどとさんざん批判され私たちは口惜しい思いを抱いてきた。
なぜだろうという疑問が頭から離れなかった。
農業には直接収入に結び付かない仕事がやたらと多い。
しかし、よくよく考えてみるとこの「カネにならない仕事」こそが環境を守っているのである。
この国の農業は長い間、生産性が低い、効率が悪いなどとさんざん批判され私たちは口惜しい思いを抱いてきた。
なぜだろうという疑問が頭から離れなかった。
農業には直接収入に結び付かない仕事がやたらと多い。
しかし、よくよく考えてみるとこの「カネにならない仕事」こそが環境を守っているのである。
工業は目的としたものだけを製造する。しかし農業ではそうはいかない。農業が生み出すのは生命だからである。命は単独では存在せず、ほかの数多くの命との連鎖によって生まれ育っていく。米を求めて田植えをすると稲も雑草も水生昆虫も彼岸花も一緒に育つ。農業だけが持つこの生命の連鎖こそが環境を守り風土を作っていることを証明したい。
(写真:黒川上(かみ)地区の田んぼ風景)
田んぼの中の昆虫やクモなどのうち害虫が9%、益虫が8%、残りの83%はそのどちらでもないことも判明し、これらは「ただの虫」と命名された。
では、「ただの虫」は何の役にも立たないのかといえばけっしてそうではない。
たとえば「ユスリカ」という「ただの虫」がいる。田んぼのトロトロ層に巣を作り、赤い糸状のものがゆらゆら揺れているのがそれだ。幼虫はオタマジャクシやヤゴのえさとなり、成虫は大型の蚊に似た姿で夏の夕空に蚊柱を作る。夕空にツバメや赤とんぼが群れるのはその捕食のためである。自然界に無用なものは何一つとして存在していない。
田んぼはけっして米だけを生産しているのではない。さまざまな生命を生み出し育み、食物連鎖の土台となっている。
(出典:「命をはぐくむ田んぼ」(特集、稲と日本人)山下惣一著、雑誌「家の光」11月号2010)
<追記>
NHK総合テレビ 10月10日(日)午後3時5分からの番組 『「生命の物語」子どもが目撃!カエルが稲を守る』 で、愛知県のある農家が30年もの間、無農薬・無肥料で稲作を経営しているという放送があった。
当然、無農薬なので田んぼの稲には多くのイナゴを含む昆虫がいる様子が放送されていたが、オーナーの農家は泰然として特に問題はない、とにこやかに笑っておられた。
よく見ていると、イナゴなどの昆虫は田んぼに住むトノサマガエルが、鮮やかに補虫して食べており うまく自然のバランスが保たれているのであった。
やまざる
川崎市黒川(当時の住所表示)の農家に生れる。
来世も菩提寺である黒川の西光寺で、永遠の眠りにつく。
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