農山村ふるさと、木枯らし吹く頃、寒気に耐えて働ける体力をと、老いた母が早朝に炊ぎ(かしぎ)するたすき姿が目に映る。
ご飯に大根・ねぎなどの野菜を混ぜて水量を増して煮込む味は、自家製の味噌のかおりいっぱいの「おじや」。
農山村ふるさと、木枯らし吹く頃、寒気に耐えて働ける体力をと、老いた母が早朝に炊ぎ(かしぎ)するたすき姿が目に映る。
ご飯に大根・ねぎなどの野菜を混ぜて水量を増して煮込む味は、自家製の味噌のかおりいっぱいの「おじや」。
「じゃ じゃ」と火力がすすむと、音をたてて煮え香る。その声が「爺や(じいや) 爺や」と、お婆さんの温かい思いやりの言葉(慈愛)に聞こえてありがたい。
寒風に働く男衆への腹ごしらえ、また、幼い子供たちにも水を増して(増水)、やわらかく炊いてあるので消化がよい。
ふるさとでは、余ったご飯(ひやめし)を、煮立つ味噌汁の中に入れて、「おじや」にして食べる習わしもあって、なつかしい味とかおりは忘れることができない。
ふるさとことば「おじや」は、ハイカラことば「ぞうすい](雑炊・増水)へと都市化されていく。
<宝典>
ざふすゐ「雑炊」:大根、葱ナド 刻ミテ煮タル粥(カユ)。或イハ味噌ナド加フ。雑雑炊。
(大言海)
ぞうすい「雑炊」(正しくは増水):味噌汁に飯、野菜を入れて炊いた粥。おじや。
(江戸語の辞典)
(出典:ふるさとの風俗宝典 土方恵治著)
真冬の子供のころ 学校や遊びから帰ってきて、家族で食べる昼食は、朝ごはんの残りを味噌汁の中に入れて炊いた「おじや」が、農家のわたしの常食だった。
お茶碗には湯気が立っている野菜がいっぱい入った雑炊が、冷えた体を温めてくれたのを昨日のように思い出す。
やまざる
川崎市黒川(当時の住所表示)の農家に生れる。
来世も菩提寺である黒川の西光寺で、永遠の眠りにつく。
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