2009年05月19日

おじや

料理造り農山村ふるさと、木枯らし吹く頃、寒気に耐えて働ける体力をと、老いた母が早朝に炊ぎ(かしぎ)するたすき姿が目に映る。

ご飯に大根・ねぎなどの野菜を混ぜて水量を増して煮込む味は、自家製の味噌のかおりいっぱいの「おじや」。


じゃ じゃ」と火力がすすむと、音をたてて煮え香る。その声が「爺や(じいや) 爺や」と、お婆さんの温かい思いやりの言葉(慈愛)に聞こえてありがたい。

寒風に働く男衆への腹ごしらえ、また、幼い子供たちにも水を増して(増水)、やわらかく炊いてあるので消化がよい。

 

ふるさとでは、余ったご飯(ひやめし)を、煮立つ味噌汁の中に入れて、「おじや」にして食べる習わしもあって、なつかしい味とかおりは忘れることができない。

 

ふるさとことば「おじや」は、ハイカラことば「ぞうすい](雑炊・増水)へと都市化されていく。

 

<宝典>

ざふすゐ「雑炊」:大根、葱ナド 刻ミテ煮タル粥(カユ)。或イハ味噌ナド加フ。雑雑炊。

                                                                                     (大言海)

ぞうすい「雑炊」(正しくは増水):味噌汁に飯、野菜を入れて炊いた粥。おじや。

                                                                             (江戸語の辞典)

(出典:ふるさとの風俗宝典 土方恵治著)

 

真冬の子供のころ 学校や遊びから帰ってきて、家族で食べる昼食は、朝ごはんの残りを味噌汁の中に入れて炊いた「おじや」が、農家のわたしの常食だった。

お茶碗には湯気が立っている野菜がいっぱい入った雑炊が、冷えた体を温めてくれたのを昨日のように思い出す。