2009年01月29日

歌劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」

愛ドイツの作曲家 リチャード・ワーグナー(1813-1883)の歌劇としては珍しく明るい「楽劇」である「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を鑑賞した。

ワーグナーの作品は超大作が多く「ニーベルングの指輪」は、4夜16時間というとてつもない歌劇をはじめとして、長時間の演奏時間の作品が多いが、この作品も全演奏時間は270分(4時間半)もかかるもの。


しかし心を決めて作品の下調べをして鑑賞に臨んだが、「楽劇」というだけあり、ストーリーの展開が分かりやすく、ワーグナーの難しさや暗さがないとても楽しみながら鑑賞できる作品だった。

人殺しや恨み・ねたみなどの要素もなく、ワーグナーの作品の幅広さを再認識した次第だ。

 

ニュルンベルグのマイスタージンガー 

あらまし

中世のニュルンベルグ。聖ヨハネ祭(6月24日)の前日から当日への物語。若い騎士のヴァルターはニュルンベルグの聖カタリナ教会で、金細工師親方のポーグナーの娘のエヴァを見染める処から物語が始まる。

 

楽劇の主役は、男やもめの靴屋でマイスタージンガーのハンス・ザックス。(ハンス・ザックスは、実在の人物で中世のニュルンベルグを代表するマイスタージンガー)。彼は歌も靴の技術も抜群で、エヴァに気を寄せていた。エヴァは若い騎士ヴァルターに恋仲なっていたためハンスはエヴァへの恋を諦め、二人を支援する。ハンスは知的で高潔、ユーモアも豊富で、作曲者ワーグナーが理想とするマイスタージンガー像。

ヴァルターが歌合戦で勝利して、街一番の娘エヴァと婚約をし、マイスターの称号を得る。

 

舞台設定:16世紀中頃、ドイツ中部のニュルンベルグの街

 

 

登場人物

ハンス・ザックス(男やもめの靴屋の親方(マイスター));ベルント・ヴァイクル(B

ポーグナー(金細工師、エヴァの父親);マンフレート・シェンク(B

エヴァ(ポーグナーの一人娘);マリ・アンネ・ヘガンダー(S

ベッグメッサー(市役所の書記、独身);ヘルマン・プレイ(B

ヴァルター・フォン・シュトルツイング(若い騎士);ジークフリート・イェルザレム(T

ダーヴィット(ザックスの徒弟);グラハム・クラーク(T

マグダレーヌ(エヴァの乳母);マルガ・シムル(A

演奏時間:4時間30分(3幕)

指揮:ホルスト・シュタイン

演出・芸術総監督:ヴォルフガング・ワーグナー

演奏:バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団

収録:1984年バイロイト音楽祭公演(ライブ収録) 

 

マイスタージンガーとは

中世の騎士歌人に似て、手工業者が芸術・歌にも携わっている工匠であり、親方という意味。

一人で作詞家・作曲家・歌手を兼ねる現代のシンガーソングライターのような存在。厳しい修行過程があり「見習」「弟子仲間」「歌手」「詩人」「親方」という段階があった。

 

作品の主題

芸術における「古さと新しさ」、「規則と独創」をこの作品を通してワーグナーが訴えている。すなわち歌の世界で資格のない素人のヴァルターが、古い歌の韻(規則)を踏襲せずに新しい感性で歌合戦に出場して勝利したこと。

 

ドイツ人ワーグナーは、ドイツを讃え、ドイツのシステムであるマイスター制度にも革新が必要なことをこの作品を通して訴えていると私は感じた。

ドイツの香りがプンプンするドイツ語の歌劇で、懐かしさを感じながら鑑賞した。

 

まず舞台のニュルンベルグは、管理人のわたしにとっても懐かしい街。

ドイツ国内を出張してニュルンベルグに立ち寄ると必ず寄った店が有名なソーセージ ニュルンベルグブルスト(長さが10cm程度で太さが人差し指位の小さなソーセージ)だけを扱う居酒屋。

胡椒が効いていてこれを炭火で焼き、洋辛子をつけながらドイツビールを飲むのが楽しみだった。

 

この作品の主役の靴屋の名前 ハンスは、ヨハネという意味であることも知った。

わたしが西独駐在当時の仕事仲間だった男に ハンス・ゴンドルフと言うのがいたが、彼の名前は誉れ高いヨハネに通じていたとは!

 

作曲家のワーグナーという名前も、仕事仲間だった発送係りのおばさんの名前がワーグナーだったので懐かしい。

 

また若い騎士を演じていたジークフリート・イェルザレムは、どこかで見覚えのある歌手だと思っていたので調べたら、同じワーグナーの作品「ニーベルングの指輪」の第二夜「ジークフリート」で、恐れを知らない若者の役を演じたジークフリート役を演じた歌手だった。

作品名「ジークフリート」の主役を演じていたのが同名のジークフリートだったのだ。

歌劇は楽しい。