2008年05月21日

『一夜草』(ひとよぐさ)

 〜春の野に すみれ摘みにと 来し我ぞ

       野をなつかしみ 一夜寝にける〜 (山部赤人『万葉集』)

 この和歌から、「菫(すみれ)」は、『一夜草(ひとよぐさ)』と呼ばれるようになったようです。


 sumire月見草」や「待宵草(まつよいぐさ)」などのように、夜、咲いて、朝にはしぼんでしまう花を、「一夜花(ひとよばな)」といいますが、菫(すみれ)」の場合は、そうではありません。

 

立ち去ることができず、一夜を過ごしてしまうほど、いとおしい花だということなのです。

 

ゆかしい紫の花びらと、飾り気のない姿。

うつむき加減に恥らう素直な様子が、人々の足を、止めてしまうのでしょう。

 

菫(すみれ)」の語源は、大工道具の「墨入れ」に似ているからという説が一般的ですが、この説に異論をはさむ声もあります。

 

古くは、食用にしていたということで、「菫摘み」もよく行われていたとか。

そこから、「摘み入れ草」が変化したという説も有力です。

 

じつは、「菫(すみれ)」には、「二夜草(ふたよぐさ)」という異称もあります。

一夜、また一夜と重ねて、さらに愛情を深めていったのでしょう。

 

今でも、心から愛され続けている花ですね。

 

  (出典: 『センスを磨き、幸せを呼ぶ〜夢の言の葉〜』

                     発行者:夢子 こと 山下 景子)

 

  (写真:よこやまの道に咲く タチツボスミレ

        「のん木草・みどり見て歩き」から引用、

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