2008年03月25日

あるトップセールス

ビジネスマン現役時代の話。

(その1)

スイスとフランスの国境に挟まれた世界で有数の風光明媚なレマン湖

湖のスイス側にあるモントルーで隔年に開催される国際見本市に、セールスエンジニアとして製品の説明・売込みのため出張していた。そこへ一人でポツンと白髪の日本人紳士がわたしの担当していた製品の前に現れた。


ソニーの盛田です。説明していただけますか?」と丁重に名を名乗って説明を求めてきた。

英語で説明する必要が無いし、暇だったことも手伝ってじっくり説明をしたところ、「よかったら背面のキャビネットを開けていただけますか?」と言う。

 

キャビネットの中には、当時優秀だったソニー製品が使われていたのだ。それを確認すると、「有難う」と言って、当社製品の評判などの質問をされて離れた。

(盛田氏とは、SONYの創業者であり、当時の社長)

 

<教訓>

自社製品の業界での位置づけなどを知るために、トップ自ら展示会で他社のブースを廻り、自分の目と耳で市場調査されている姿に驚いた。

部下の紙のレポートや口頭による報告でなく、まず自分の目で見て確認し、口を使って会話をしながらライバル社の製品実態、販売戦力等の把握をしており、市場調査を行っている。

 

レマン湖

(その2)

自由時間にソニーのブースへ行った。

するとものすごい人だかりの集団が入ってきた。よく見ると世界でナンバーワンのアメリカ企業の社長がソニーブースを視察に来たのだった。

すると、すかさずあの盛田さんが待っていたかのように現れて、歓迎の言葉を言ったあと、英語で丁々発止のやり取りが始まった。

 

アメリカの社長が日本のライバル企業にきているということで、双方の会社の社員たちはどのようなやり取りがされるか、興味津々で聞き耳を立てていた。業界関係と思われるマスコミ記者たちも、メモ用紙を片手に耳を立てていた。

 

盛田さんは「貴社の製品は世界で最も優秀な製品であることは、わたしも認めている。

そこで提案があるのだが、その貴社の製品のコンポーネントに、我が社のユニットを加えれば、これは天下に敵無しの最も優れた製品になると考える。いかがだろうか?」と、自社製品の売込みを始めた。

 

それを聴いたアメリカの社長は、「良い考えだ!真剣に検討しよう。」とにこにこしながら即答した。

 

この発言は、そこの席にいたソニーやアメリカの会社の社員たちは必死になってメモをしながらそれからのやり取りを一言一句聞き逃さないように聞き耳を更に立てていた。

トップの発言が持つ意味は大きいからだ。

 

<教訓>

優秀な会社のトップは、優秀なセールスマンであると思った。

しかも世界を市場にしている会社のトップは、語学力・英語の力が不可欠と思った。

企業は形こそ違え、物を作って売ることにより初めて利益が出る。優秀な製品をいかに販売するかが生き残りを左右する。売って利益が出なければ、企業は消滅してしまう。