2007年07月18日

歌劇「トロイアの人々」(Les Troyens)

プリンセス台風4号一過の海の日。休日の午後、贅沢な時間を過ごした。

 

フランス ロマン派音楽の作曲家ルイ・エクトル・ベルリオーズLouis Hector Berlioz)の4時間強に及ぶ大作歌劇『トロイアの人々」(Les Troyens)』を鑑賞したのだ。


すべての芸術に通じている大先輩の素晴らしい部屋で、それぞれがユニークな個性を持っている二人の先輩と共に、レミーマルタンのブランディーXOをちびりちびりと舌の上で転がしながら 最高と評されるニューヨーク・メトロポリタン・オペラを鑑賞した。

 

オペラを鑑賞する人は多いかもしれないが、この「トロイアの人々」を見たという人はあまりいないと思う。オペラで4時間強の作品となると、演じる人もそうだが鑑賞するわたし達も構えてしまう。アルコールを片手に 今回も気軽に鑑賞した。

 

原作:ウエルギリウスの叙事詩

台本:ルイ・エクトル・ベルリオーズ

作曲:ルイ・エクトル・ベルリオーズ

指揮:ジェームズ・レヴァイン

演出:ファブリッチオ・メラーノ

メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱団、バレエ団

 

主な主演者

アエネアース:プラシドドミンゴ(T)<トロイアの英雄>

ディドー:タティアナ・トロヤノス(MS)<カルタゴの女王>

カサンドラー:ジェシー・ノーマン(S)<プリアムスの娘>

コロエブス:アラン・モンク<カサンドラーの婚約者>

アンナ:ジョセリン・タイロン<ディドーの妹>

ナルバール:ポール・プリシュカ<ディドーの大臣>

プリアムス:ジョン・マカーディ<トロイアの王>

ヘクバ:バーバラ・コンラッド<トロイアの女王>

ラベンダー畑600

今から24年前の1983年10月にメトロポリタン劇場でライブ収録された作品であり、この版はレーザーディスクやDVDで広く紹介されている。

 

ニューヨークのメトロポリタン劇場の観客は、当然アメリカ人とすれば言語は米語。

そこでフランス語での4時間にわたる歌劇「トロイアの人々」が上演されるわけだから、観客の中でオペラ歌手の今唄っている歌の意味を本当に理解している人がどのくらいいるだろうか?

 

わたし達は24年前のメトロポリタン劇場の歌劇を先輩の部屋のいわばロイヤルシートに座して鑑賞したのだが、ありがたいことに目の前で繰り広げられる歌手の歌の意味は、日本語のテロップが指し示してくれる。

 

24年前の最高のスタッフ・舞台を 快適な部屋でブランディーを片手に奥様手つくりの贅沢なおつまみを味わいつつ 日本語のテロップを見ながら、「トロイヤの人々」を鑑賞する贅沢な時間。

 

もし自宅で4時間もオペラ鑑賞するとなれば、その間に、山ノ神からの用事言いつけがあり、外部からの電話がなり、宅配便や郵便屋さんの訪問があったりして作品に集中できないものだが、大先輩の居室なのでそのような心配も無く作品に集中できたのはありがたい。

 

紀元前のトロイ・カルタゴの世界における男女の愛描いた作品を、自分の五感をフルに使って鑑賞した。

即ち 

はステージの動き、オペラ歌手の一挙手一挙手を追い

はベルリオーズのメリハリの聞いたメロディーと、歌手の感情をこめた歌を聴き

はフランスの最高のコニャック XOのかぐわしい香りを嗅ぎ

はコニャック XOの焼けるような味を味わい

   という具合。

(触覚)は今回見送り

  

しかし音楽の土素人、オペラの基礎知識がないわたしが作品に接するには若干の努力が必要だ。まず作品の登場人物の名前と役割、それにストーリーの展開・あらすじを事前に知っておく必要がある。今回も解説書を3回読み、登場人物を紙に書き出して、相関関係の図を作った。

 

そうしても音楽の音符の知識のないわたしには、ロジカルに音楽を説明できない。

今回もただひたすら、4時間強のルイ・エクトル・ベルリオーズの音楽の世界に浸かった。理屈でなくただ気持ちが良いかどうか、彼のメリハリの効いた音楽の世界にただひたすら浸かった。

 

オペラ歌手は凄い。

トロイの王女役のカサンドラーを演じたジェシー・ノーマン、カルタゴの女王役を演じたタティアナ・トロノヤス、トロイアの英雄役アエネーアースを演じたプラシド・ドミンゴは凄い。

 

テレビのドラマではない。4時間に及ぶライブのオペラで、次々と替わる台詞をすべて頭に入れて、オーケストラの演奏に併せてジェスチャーを交えながら歌うというのは神業ともいうべき記憶力が求められるはずだ。

わたしなどは小学校の学芸会の短い台詞(せりふ)さえ覚えられなかったが、彼らはプロとして頭に入れた台詞をその場で数時間にわたって相方と歌うのだから凄いと思う。

 

もっと凄いと思ったのは、オーケストラ指揮者だ。

彼がオペラの進行をすべてつかさどっている。オペラでは作曲者の意を解し、全曲のイメージを頭に叩き込んで、オーケストラを指揮して行くのだから凄い。これもやり直しの聞くTV番組ではない。すべてライブの生演奏だ。

 

この世に生を受けて、フランスのルイ・エクトル・ベルリオーズのオペラに接するという機会があったのはありがたいことだ。

     (記事中の写真は、北海道のラベンダー畑。2年前に撮影。歌劇とは無関係)