
渡辺淳一のあまりにも有名になった「愛の流刑地」だ。
50歳代の主人公 菊冶と 富山出身の30代(?)のヒロイン 冬香との不倫小説(と、私は捉えていたが文芸評論家の先生方は、ナント評価されているか知らない)。
作品の中で、ヒロインの冬香が夫の転勤に合わせて京都から新百合ヶ丘に引っ越してきて住んでいる、冬香が小田急線に乗っている、箱根に菊治と不倫旅行に行くというように地名がとても身近なものに感じられて引きこまれていった。
しかし何より今おかれている自分の立場・過去に経験したことが無い(願望だけは人並みにあったが)自分と、作品の中の菊冶の行動があまりにもかけ離れていて、読むに従ってうらやましく思う菊治に感情移入している自分に気がつく。
冬香が菊治に殺された昨年の8月末にはもうこの小説は終わりかと思っていたが、さすがプロの小説家。 渡辺淳一は、延々と5ヶ月も読者の関心をひきつけて、去る1月31日に最終回を迎えた。タイトルの「愛の流刑地」の意味も理解し、あと味も悪くはなく、すっきりした感じだった。
去年の秋からこの作品の映画化が具体的に検討されているという。しかしこれは、視覚に訴える映画より、日本語で表現された小説を、読む人の頭の中で情景を組み立てイメージして味わった方が素晴らしいと私は思う。

会社では社長が出勤すると先ず秘書の女性に「日経の朝刊を持ってくるように!」と指示を出し、朝一番に「愛の流刑地」を先ず読んでから、次に会社の仕事に移る人が多いと聞いたことがある。
少なくとも毎朝 日経新聞を読む人は、冬香と菊治のその日の行動を把握してからでなければ一日が始まらず、仕事に手がつかなかったという人が多かったと思う。
過去 日本経済新聞に連載された渡辺淳一の男女関係を扱った新聞連載小説の「化身」や「失楽園」も若かった私は、これもむさぼるように読んだものだ。
結婚をしない若い人が増えているという風潮の中で、本当の大人の男と女の愛を描いた「愛の流刑地」も終わり、ライブドア事件も全貌が見えてきた今、また取り立てて株を持っているわけでもないので、私は日経新聞に対して少しばかり関心が薄れてきたようだ。
やまざる
川崎市黒川(当時の住所表示)の農家に生れる。
来世も菩提寺である黒川の西光寺で、永遠の眠りにつく。
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